- アジアのミツバチに学ぶ侵入防止の知恵
- 実際のハチ駆除の施工例(全国編)
- 施工現場での意外なハプニング集
- 匂い・餌・水の管理でできる予防策
- 知っておきたい蜂の習性とマル秘豆知識
- まとめと現場担当からのひとこと
アジアのミツバチに学ぶ侵入防止の知恵
真昼のアスファルトがゆらぐ八月の現場、ヘルメット越しに伝わる熱気と、草いきれの青い匂い、そして「ブウーン」とくぐもった低音が壁の向こうから腹に響く感じ、これはもう嫌でもスイッチが入るんです。私、大塚は全国を回って二十五年、スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチの気分の浮き沈みと、人の暮らしのリズムのぶつかり合いを飽きるほど見てきました。
で、いきなり結論を言うと、予防の要は「匂い・餌・水」の三点管理に尽きます。これ、実はアジアのミツバチが身をもって教えてくれるんですよ。アジアのミツバチは鳥や水牛の糞を巣口に塗って、外敵であるスズメバチの侵入率をぐっと下げる行動が知られています。
生々しい話ですが、匂いの膜を作って通り道の“意味”を変えちゃうわけです。人間の家でも近い考え方が効きます。例えば、生ゴミの蓋をきっちり閉める、甘い飲み物の空き缶を屋外に放置しない、打ち水は巣の近くではやらない、雨樋や汚水桝の水溜まりを作らない、樹液がにじむ庭木の剪定時期をずらす——こういう小技で「ここは美味しくないし飲めないし涼しくない」と蜂に思わせれば、営巣候補から外れていくんです。
匂いは鼻だけじゃなく風の向きでも表情を変えるから、北風が抜ける冬場に虫網戸の破れを直しておくとか、春の花が咲く前に甘い香りを放つ肥料を室外に置かないとか、季節の置き土産を残さないのもコツなんですよ。私の工具袋には、殺虫剤の他に消臭・中和用のスプレー、雨樋ブラシ、排水の流量計まで入っています。「駆除屋なのに清掃道具?」って笑われますけど、匂いと水を抑えるのが一番の“防具”なんです。
実際のハチ駆除の施工例(全国編)
北海道の住宅地でのスズメバチ駆除
現場は札幌市手稲区、2025年7月22日の午後一時。気温は25度、カラッとしてるけど日差しはじりじりで、鼻先に芝生の青い匂いが刺さる日でした。依頼主の三浦様は、庭のプレハブ物置の天井裏で「トン、トン」と木を叩くような音がすると言います。
耳を当てると、確かに「ブウーン」の低音に混じって、巣材を噛む乾いたリズム。確認すると、出入口は物置の換気スリット。働き蜂が北側の白樺並木の上空から一直線に帰ってくるのが見えます。「散歩コースが近いので怖くて」と三浦様。私、うっかり長靴を車に置いてきて、朝露で湿った芝で靴下までぐっしょりにしちゃいました。
こういう日、足先の冷えが集中力を削ぐんですよね、反省です。作業は夕方の活動低下を待たず、即日対応。防護服を着込み、CO2混和の低飛散タイプの薬剤で巣口を一時封鎖、内部の個体を鎮静化してから巣を袋ごと撤去。直径は32センチ、まだ盛り期の手前。撤去後は換気スリットにステンレスメッシュ、物置内の甘い匂いの元だったジャム空き瓶の置きっぱなしを回収、雨樋に溜まった水をブラシで抜き、着匂いの中和剤を散布。
帰り際、三浦様から「手稲山の雲、きれいですね」と言われて見上げたら、積雲の影が住宅街に斜めの帯を作っていて、ちょっとだけ得した気分でした。こういう“光景の記憶”は、次の現場でも役に立つんです。雲行きと風で帰巣ルートが読めますから。
名古屋市郊外でのアシナガバチ駆除
名古屋市守山区小幡、2025年6月28日午前10時、気温30度、湿気のベールが体にまとわりつく日。依頼主は中川様、小学校低学年の兄妹がいて、ベランダの布団を叩く時に蜂が飛び出してくる、と。現場で視線の高さを合わせて探すと、二階ベランダの雨避けフードの裏側にシャワーヘッド型のアシナガバチ巣。作りたてで働き蜂は十数匹、警戒音の「プププ…」が耳の後ろで震える感じ、嫌ですねぇこれ。
私、一度手袋の内側に汗が溜まりすぎて、ゴムが肌に吸い付いて脱げなくなり、道具の持ち替えで一瞬もたついたんです。そこを見た中川さんが「無理しないでくださいね」と冷たい麦茶を差し出してくれて、救われました。作業は低刺激の残効性スプレーで個体数を抑え、巣房の幼虫は確実に処理、雨避けフードの裏に残るフェロモンは中和剤で拭き取り。
仕上げにフードのビスを一段長いものに交換してできた隙間を埋め、ベランダの物干し竿のベタつき(粉洗剤の甘い匂い)を拭き上げ。中川さんいわく「来週は大曽根の商店街で七夕飾りが出るんです。布団が干せると嬉しい」とのこと。地域の行事って、作業後の生活の“回復”を具体的に想像させてくれるから好きなんですよ。
作業記録には「洗剤の匂い強→拭浄」「排水溝わずかに滞水→清掃」とメモ。こういう“餌・水・匂い”のトリオを潰すのが、再発防止の肝なんです。
沖縄県石垣島でのミツバチ群移動対応
石垣市美崎町、2025年5月11日夕方五時。湿度80%、さとうきび畑の甘い香りと潮の匂いが混ざって、空が重い。依頼主の金城様のカフェ「波花(なみはな)」の軒先に、ぶどう房のように固まったミツバチの塊が出現。
いわゆる分蜂群で、王台を抱えた新女王と働き蜂たちが一時的に集合してる状態です。殺虫は不要、というか厳禁。私は麻布と巣箱、薄手のブラシを用意して、夕暮れの気温低下を待ってから、塊の下にそっと箱を構え、軽くトントンと枝を叩いて落とす——のは定石なんですが、この日、私が“軽く”の加減をミスって、まさかのポタポタ雨のように蜂が肩に降ってきて、背中がむずむずして「うわ、やっちゃった」と声が出ました。
周りの観光客が「おおお…!」とどよめき、金城さんが氷水のタオルを持って走ってきてくれて助かりました。幸い鎮静は効いていて刺しはなし。箱に収めた後は、店の明かりに誘引されないよう外灯の色温度を電球色から昼白色に変更、砂糖を使うドリンクのテイクアウト口のゴミ箱にフタを新調、店脇の排水溝のヌメリを高圧で除去。ミツバチは基本おとなしいけれど、甘い匂いと水、そして涼しい陰は大好物。
金城様が「これで営業再開できます」と笑って、帰りに商店街の「琉球まつり」のチラシをくれました。石垣は夕暮れの風が柔らかくて、汗の塩が腕に白く残る感じがなんだか誇らしく思えるんですよね。作業台帳には「照明色温度変更→誘引低下期待」と追記。こういう細部が効くんです、ほんとに。
施工現場での意外なハプニング集
蜂駆除の現場って、予定通りにいく日なんてむしろ珍しいんです。例えば、去年の秋、福岡市早良区でスズメバチの駆除に入った時。庭先で防護服を着込んでいたら、依頼主のおじいさんが「これ食べんね」と焼き芋を差し出してきてくれたんですが、防護面を外せないまま受け取ったもんだから、両手がふさがって薬剤噴霧器を肩からずり落としそうになったことがあります。
焼き芋の香りは最高でしたけど、蜂より芋を守るのに必死でしたよ。別の日は、三重県四日市市でのアシナガバチ駆除。巣は車庫の奥の脚立でしか届かない場所にあったんですが、脚立を立てた途端、近所の子どもたちが「秘密基地みたい!」と集まってきて、完全に見物モード。
作業の危険性を説明して安全距離を取らせた後も、実況中継みたいに「おじさん、いま蜂が飛んできた!」って声をかけてくるもんだから、笑いを堪えるのが大変でした。こういうハプニングは、その場の空気を柔らかくしてくれる反面、集中を乱すリスクもあるので、毎回気持ちの切り替えが勝負です。
匂い・餌・水の管理でできる予防策
蜂の侵入や営巣を防ぐ一番の方法は、餌・水・匂いを管理すること。これは本当にシンプルですが、徹底できている家庭は少ないんです。
例えば、庭に置きっぱなしのバーベキューコンロ。肉汁やタレの甘い香りが乾いても残り、これが夏場は蜂やハエを呼びます。対策は使用後すぐの洗浄と乾燥。雨水が溜まる鉢皿やジョウロも要注意で、特に真夏は一晩でボウフラや蜂が集まる水場になります。
台所の生ゴミは匂いが広がらないよう密閉し、週2回以上の回収日に合わせて排出。換気扇フードやエアコン室外機の隙間は、ステンレスメッシュや防虫ネットで塞ぐこと。これらの予防策をやっているお宅は、実際の駆除依頼が激減しています。私の経験では、予防策を徹底した家とそうでない家では、蜂の接近頻度が半分以下になるんです。
知っておきたい蜂の習性とマル秘豆知識
現場でよく話すマル秘知識を2つ紹介します。
1つ目は「アジアのミツバチの防御戦術」。これは冒頭で触れた通り、鳥や水牛の糞を巣口に塗ってスズメバチの侵入を94%も防ぐという驚きの方法です。匂いのバリアは蜂にとって命綱で、人間の家の予防策にも応用可能。
2つ目は「スズメバチの捕食習性」。実はスズメバチは別種のスズメバチを捕食することがあり、同じエリアでの種間抗争が起きることもあります。例えば、キイロスズメバチがオオスズメバチの営巣を妨害する場面も見たことがあります。こういう習性を知っていると、駆除や予防のタイミングを見極めやすくなるんですよ。
施工後の経過とお客様の声
駆除が終わってからの経過観察も大事です。
北海道の現場では施工後2週間の時点で再発ゼロ、沖縄の現場では1か月後の確認でも蜂の飛来なし。名古屋の案件では、施工から3日後に依頼主の奥さんから「今朝、洗濯物を干す時の恐怖がなくなって、久しぶりに空をゆっくり見上げられました」と電話をいただきました。こういう声は、作業の疲れを一瞬で吹き飛ばしてくれます。
もちろん、再発防止のためのアドバイスもその場でします。「庭木の剪定を早めに」「屋根裏換気口はメッシュで塞ぐ」など、小さなことの積み重ねで安心は長持ちします。
まとめ
蜂駆除は単に巣を取るだけでは終わりません。
アジアのミツバチに学ぶ防御戦術のように、匂い・餌・水をコントロールする予防策こそが本当の意味での「駆除完了」です。全国各地での実際の施工例や現場のハプニングを通しても、どの地域にも共通しているのは、事前の対策と正しい知識の重要性。
もし蜂の姿を頻繁に見かけるようになったら、早めにプロに相談することをおすすめします。放置は危険、でも正しい方法なら被害は防げます。現場から言わせてもらうと、結局のところ蜂との付き合い方は「距離感」がすべてなんですよ。
執筆者プロフィール
大塚(全国担当マネージャー)。蜂駆除歴25年、年間施工件数1,200件以上。スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチなど全種対応。害虫害獣駆除にも精通し、各地の自治体や消防とも連携して活動中。
監修者情報
一般財団法人日本環境衛生センターの指導要領に基づき、安全かつ確実な駆除方法を採用。防除作業監督者資格取得。